
要約
グラフフィルタリング(GF)を基盤とする協調フィルタリング(CF)手法は、学習プロセスを必要とせず、低域フィルタ(LPF)を用いることで、推薦精度において最先端の性能を示している。しかしながら、従来のGFベースCF手法は、アイテム同士の類似度グラフ上で行列分解を実施することで理想的なLPFを実現しようとしており、これにより計算コストが顕著に増大するという問題があり、高速な推薦が求められる場面では実用性に欠けるという課題を抱えていた。本論文では、学習不要かつ行列分解不要なGFベースCF手法であるTurbo-CFを提案する。Turbo-CFは、高コストな行列分解を回避するため、多項式グラフフィルタを採用することで、現代のコンピュータハードウェア(特にGPU)の性能を最大限に活用できる。具体的には、まずエッジ重みが効果的に制御されたアイテム同士の類似度グラフを構築し、その後、明示的な行列分解を伴わずに低周波成分のみを保持する独自の多項式LPFを設計する。実験の結果、Turbo-CFは極めて高速でありながら高い精度を達成し、実世界のベンチマークデータセットにおいて1秒未満の実行時間で、最先端の競合手法と同等の推薦精度を実現することを示した。