計算病理学システムにアーティファクト処理パイプラインを装備する:計算と性能のトレードオフの事例展示

組織病理学は、顕微鏡検査下でのがん診断の金標準です。しかし、組織学的な組織処理手順によりアーティファクトが生じ、これらのアーティファクトは最終的にガラススライドのデジタル化されたバージョンである全スライド画像(Whole Slide Images: WSIs)に転送されます。アーティファクトは診断上無関係な領域であり、誤った深層学習(Deep Learning: DL)アルゴリズムの予測を引き起こす可能性があります。したがって、計算機病理学(Computational Pathology: CPATH)システムにおいてアーティファクトを検出し排除することは、信頼性のある自動診断のために不可欠です。本論文では、損傷した組織、ぼけ、折れた組織、空気泡、および組織学的に無関係な血液という5つの主要なアーティファクトをWSIsから検出するための専門家混合(Mixture of Experts: MoE)スキームを提案します。まず、特定のアーティファクト形態を捉えるために独立したバイナリDLモデルを専門家として訓練します。次に、融合メカニズムを使用してそれらの予測結果をアンサンブルします。最後に、最終確率分布に対して確率的閾値処理を適用し、MoEの感度を向上させます。私たちは2つのMoEと最先端の深層畳み込みニューラルネットワーク(Deep Convolutional Neural Networks: DCNNs)およびビジョントランスフォーマー(Vision Transformers: ViTs)による2つの多クラスモデルを使用してDLパイプラインを開発しました。DCNNsベースのMoEスキームとViTsベースのMoEスキームは単純な多クラスモデルよりも優れた性能を示し、異なる病院やがん種からのデータセットでテストされました。その中でDCNNsを使用したMoEが最良の結果をもたらしました。提案されたMoEは未見データに対してF1スコア86.15%と感度97.93%のスコアを得ており、ViTsを使用したMoEよりも推論時の計算コストが低いという特徴があります。この最高性能を持つMoEsには多クラスモデルよりも相対的に高い計算上のトレードオフが必要ですが、提案されたアーティファクト検出パイプラインは信頼性のあるCPATH予測だけでなく品質管理にも寄与することが期待されます。