
要約
分子系の表現に向けた効率的な機械学習モデルの開発は、科学研究においてますます重要性を増している。本研究では、デカルトテンソル表現を活用する、O(3)不変性を満たすメッセージパッシングニューラルネットワークアーキテクチャ「TensorNet」を提案する。デカルトテンソルによる原子埋め込みを用いることで、特徴量の混合が行列積演算により簡素化される。さらに、これらのテンソルを回転群の既約表現に効率的に分解することで、必要に応じてスカラー、ベクトル、テンソルを個別に処理することが可能となる。高ランクの球面テンソルモデルと比較して、TensorNetは大幅に少ないパラメータ数で最先端の性能を達成している。小分子のポテンシャルエネルギー予測においては、単一の相互作用層でも十分な精度が得られる。こうした特性の総合的効果により、モデルの計算コストは著しく低減される。さらに、ポテンシャルエネルギーおよび力の上位にベクトル量やテンソル量の高精度な予測が可能となる。結論として、TensorNetのフレームワークは、最先端の不変性を持つモデル設計の新たな可能性を切り開くものである。