
要約
本稿では、デジタル画像の品質を向上させるための自動化された低照度画像強調手法「TreEnhance」を提案する。この手法は、木探索理論、特にモンテカルロ木探索(Monte Carlo Tree Search; MCTS)アルゴリズムと深層強化学習を組み合わせたものである。入力として低照度画像を提示すると、TreEnhanceはその強調後の画像および、その画像を生成するために用いられた画像編集操作の順序を出力する。学習フェーズでは、この手法は「生成フェーズ」と「最適化フェーズ」の2つの主要なステップを繰り返し実行する。生成フェーズでは、MCTSを変形・拡張した手法が画像編集操作の探索空間を探索し、最も有望な操作シーケンスを選定する。最適化フェーズでは、強調方策を実装するニューラルネットワークのパラメータが更新される。新規画像の強調に向け、2種類の推論手法を提案している。1つはMCTSに基づくもので、精度は高いが、計算時間およびメモリ使用量がやや大きい。もう1つは学習済みの強調方策を直接適用する手法であり、処理は高速だが、やや精度が低下する。さらに、本研究では、フォトエディタが特定の入力画像に対して実施した強調手順を「逆方向」に再現する「ガイド付き探索戦略」を提案する。従来の最先端手法とは異なり、TreEnhanceは画像の解像度に制約を設けず、最小限のチューニングで多様なシナリオに適用可能である。本手法は、低照度画像データセットおよびAdobe Five-Kデータセットの2つのベンチマークで評価され、定性的・定量的に良好な結果が得られた。