
要約
我々は、ニューラル機械翻訳(NMT)における新しいデータ拡張技術を提案する。本手法は、ROT-$k$暗号文に基づくものであり、ROT-$k$とは、平文の文字をアルファベット上でその$k$番後の文字に置き換える単純な文字置換暗号である。まず、平行データのソース側(平文)に対して、異なる$k$の値を用いて複数のROT-$k$暗号文を生成する。次に、これらの暗号化されたデータを元の平行データと組み合わせ、マルチソース学習を用いてニューラル機械翻訳の性能を向上させる。本手法は「CipherDAug」と命名され、共正則化(co-regularization)を想起させる学習プロセスを採用しており、元の学習データ以外の外部データ源を必要としない。また、標準的なTransformerアーキテクチャを用いることで、複数のデータセットにおいて、強力な既存のデータ拡張手法を大きく上回る性能を達成している。この技術は既存のデータ拡張手法と容易に組み合わせ可能であり、特にリソースが限られた低リソース環境において顕著な効果を示す。