要約
会話内の感情認識（Emotion Recognition in Conversations: ERC）は、共感を持つ機械の開発においてますます注目を集めている。近年、深層学習モデルを用いた会話文脈の把握に向けた多くのアプローチが提案されている。しかし、感情的ヒントを抽出・統合する能力に欠けるため、これらの手法は文脈理解の面で十分ではない。本研究では、認知的視点から会話文脈を包括的に理解することを目的として、新たなコンテキスト推論ネットワーク（DialogueCRN）を提案する。感情の認知理論をヒントに、複数ラウンドの推論モジュールを設計し、感情的ヒントの抽出と統合を実現した。この推論モジュールは、直感的な情報検索プロセスと意識的な推論プロセスを繰り返し実行する構造となっており、人間特有の認知的思考を模倣している。3つの公開ベンチマークデータセットを用いた広範な実験により、提案モデルの有効性および優位性が実証された。