RV-GAN:新規のマルチスケール生成対抗ネットワークを用いた網膜血管構造の網膜写真におけるセグメンテーション

網膜のマクロおよびマイクロ血管構造の高忠実度なセグメンテーションは、変性性網膜疾患の診断において極めて重要な役割を果たすが、実現は極めて困難な課題である。従来の自己符号化に基づくセグメンテーション手法は、符号化段階における連続的な解像度の低下に加え、復号段階でその情報損失を回復できないため、網膜マイクロ血管構造の抽出能力に限界がある。本研究では、この課題を緩和するため、高精度な網膜血管セグメンテーションを実現する新たなマルチスケール生成モデル「RV-GAN」を提案する。本アーキテクチャは、より正確なマイクロ血管の局在化とセグメンテーションを実現するため、2つの生成器と2つのマルチスケール自己符号化型ディスクリミネータを採用している。従来のGANベースのセグメンテーションシステムが抱える忠実度の低下を回避するため、本研究では新しい重み付き特徴マッチング損失を導入した。この新たな損失関数は、ディスクリミネータの復号器からの特徴をエンコーダからの特徴よりも優先的に取り入れる設計となっており、ディスクリミネータの復号器がピクセルレベルで本物か偽物かを判定しようとする性質と組み合わせることで、マクロおよびマイクロ血管構造の再現性が大幅に向上する。再構成損失と重み付き特徴マッチング損失を統合した本アーキテクチャは、公開されている3つのデータセット(DRIVE、CHASE-DB1、STARE)における網膜血管のピクセル単位セグメンテーションにおいて、それぞれAUC(Area Under the Curve)0.9887、0.9914、0.9887を達成した。さらに、平均交差率(Mean-IOU)および構造的類似性指標(SSIM)という2つの関連する評価指標においても、他のアーキテクチャを上回る性能を示した。