
要約
知識グラフにおけるリンク予測の課題は、エンティティ間の欠落した関係を予測することにある。知識グラフ埋め込み(knowledge graph embedding)は、知識グラフのエンティティおよび関係を連続的なベクトル空間における低次元ベクトルとして表現することを目的としており、優れた予測性能を達成している。埋め込みモデルが可能な限り多くの異なる接続パターン(connectivity patterns)および関係の写像性質(mapping properties)を捉えることができれば、リンク予測タスクにおいてより大きな利点が得られる可能性がある。本論文では、4種類の接続パターン(対称性、反対称性、逆転性、合成性)および4種類の写像性質(1対1、1対多、多対1、多対多)をモデル化可能な新しい埋め込みモデル、LineaREを提案する。具体的には、知識グラフ埋め込みを単純な線形回帰問題として捉え、関係を2つの低次元ベクトル表現されたエンティティの線形関数としてモデル化し、2つの重みベクトルとバイアスベクトルを用いる。ベクトルが実数空間上に定義されており、モデルのスコア関数が線形であるため、本モデルはシンプルかつ大規模な知識グラフにスケーラブルである。複数の広く用いられる実世界データセットにおける実験結果から、提案するLineaREモデルが既存の最先端モデルを顕著に上回る性能を発揮することが示された。