
要約
グラフ畳み込みニューラルネットワーク(GCN)は、グラフのノードをユークリッド空間に埋め込む手法であるが、スケールフリーまたは階層構造を有する現実世界のグラフを埋め込む場合、大きな歪みが生じることが示されている。これに対して、双曲幾何学は、はるかに小さな歪みで埋め込みを実現できる有望な代替手段である。しかし、GCNを双曲幾何学に拡張することは、双曲空間におけるニューラルネットワーク演算(例えば特徴変換や集約)をどのように定義すべきかが明確でないという、いくつかの特有の課題を伴う。さらに、入力特徴量がしばしばユークリッド空間に存在するため、適切な曲率を持つ双曲埋め込みに特徴量を変換する方法も未解決である。本研究では、階層構造およびスケールフリー構造を有するグラフに対して、インダクティブなノード表現を学習可能な、初めてのインダクティブ双曲GCNである「双曲グラフ畳み込みニューラルネットワーク(HGCN)」を提案する。本手法は、双曲空間の双曲面モデルにおいてGCN演算を導出し、各層で学習可能な曲率を持つ双曲空間へのユークリッド入力特徴量のマッピングを実現する。実験結果から、HGCNは階層構造を良好に保持する埋め込みを学習でき、低次元でもユークリッド系の対応手法と比較して性能が向上することが示された。特に、最先端のGCNと比較して、リンク予測におけるROC AUCでは最大63.1%の誤差低減、ノード分類におけるF1スコアでは最大47.5%の向上を達成し、Pubmedデータセットにおいても既存の最先端性能を改善した。