
本論文では、暗黙のフィードバックを用いた協調ランキングのための新しいニューラルアーキテクチャを提案します。我々のモデル、LRML(Latent Relational Metric Learning:潜在的関係計量学習)は、推薦システムにおける新しい計量学習手法です。具体的には、ユーザーとアイテムのペア間での単純なプッシュ-プルメカニズムではなく、各ユーザー・アイテム相互作用を記述する潜在的な関係を学習することを提案します。これにより、既存の計量学習手法が持つ可能性のある幾何学的な柔軟性の欠如が緩和されます。これにより、性能向上だけでなく、より広範なモデリング能力が得られ、モデルはより多くの相互作用にスケールすることが可能となります。そのために、拡張されたメモリモジュールを使用し、これらのメモリブロックに注目して潜在的な関係を構築する方法を学習します。メモリベースの注意モジュールはユーザー・アイテム相互作用によって制御され、学習した関係ベクトルは各ユーザー・アイテムペアに特異的となります。したがって、これは各ユーザー・アイテム相互作用に対して排他的かつ最適な関係変換を学習することと解釈できます。提案されたアーキテクチャは複数の推薦ベンチマークで最先端の性能を示しています。LRMLはNetflixやMovieLens20Mなどの大規模データセットにおいてHits@10およびnDCG@10で他の計量学習モデルよりも6%〜7.5%優れた性能を発揮します。さらに、定性的研究でも我々の提案モデルが暗黙のフィードバックのみで訓練されているにもかかわらず明示的な感情情報や時間情報、属性情報を推論し符号化できる証拠が示されています。このようにして、LRMLが暗黙的なデータセット内に隠された関係構造を見出す能力が確認されました。