AIが生産性を押し上げる一方、雇用は伸び悩む「非雇用成長」の時代が到来か――ゴールドマン・サックスが警鐘
ゴールドマン・サックスが、AIの進展により生産性は高まっているものの、雇用の拡大にはつながらない「雇用なし成長」の時代が米国に訪れつつあると警告した。同社の分析レポートによると、近年のGDP成長は堅調だが、雇用の伸びは限定的で、今後もこの傾向が続く可能性が高い。その背景には、AIによる生産性向上が主な成長要因となり、労働力供給の伸びは人口増加や移民の減少により鈍いことだ。 すでに雇用市場の弱体化の兆しが見られ、特に医療を除く分野での雇用成長はマイナスに転じている。企業の経営陣はAIを労働コスト削減のツールとして積極的に活用しており、これが長期的に採用を抑制する要因となる可能性がある。特に若いテクノロジー従事者に影響が顕著で、AIに最も影響を受けやすい業界ではすでに雇用成長が負の値を記録している。 同社は、AIが完全に大量失業を引き起こすとは考えていないが、技術導入に伴う「移行の摩擦」は避けられないとしている。過去の技術革新(例:自動化)と同様、一時的な失業や職種の変化は避けられない。ただし、AIが労働力を代替する傾向が強い場合、完全雇用の維持は難しくなると指摘。特に、生産性の急上昇後に景気後退が訪れた場合、企業は構造改革の一環として人件費を削減し、失業率の回復が遅れる「雇用なし回復」が起きるリスクがある。2001年の景気後退がその典型例だ。 さらに、AIは中間層の白領職を「空洞化」させる可能性があり、所得格差の拡大を招く恐れもある。一方で、一部のデータでは低スキル労働者にとってもAIが効果を発揮するケースがあるとされる。 一方で、生産性の向上はインフレ抑制に寄与し、連邦準備制度理事会(FRB)が失業率の上昇を理由に金利引き下げを検討できる余地を生む。現在、米国は政府閉鎖による雇用統計の欠如、トランプ政権の関税政策、AIの激しい変化など、多くの不確実性に直面している。ADPのデータでは9月に民間部門で3万2000人の雇用が失われ、リベルイオ・ラボスの調査では求人募集が前年比17.2%減少。チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスチャンスは、採用計画がリーマン危機以来最低水準にまで落ち込んだと報告している。 このように、AIの恩恵は経済成長に寄与する一方で、雇用市場への影響は深刻で、今後の経済政策と社会構造に大きな課題を突きつける。
