Polars GPUエンジンでVRAMを超えるデータを処理:UVMとMulti-GPUストリーミングの活用法
大容量データを処理するポラースGPUエンジンの活用方法 金融工学、アルゴリズミックトレーディング、不正検出など、精度と迅速さが求められる分野におけるデータ分析には、数百ギガバイト(GB)単位の大量データの処理が必要不可欠です。急速に普及しているデータ処理ライブラリである「ポラース」は、NVIDIA cuDFによって強化されたGPUエンジンを搭載し、これらの業界で一般的な計算集約型クエリを加速します。 しかし、GPU利用での一般的な課題は、VRAM(GPUの専用メモリ)がシステムRAMより小さいことです。これにより、非常に大規模なデータセットを処理しようとした際に問題が発生することがあります。 ポラースGPUエンジンでは、以下の2つのオプションがあります: 統合仮想メモリ(UVM): システムRAMへデータを拡張する技術 マルチGPUストリーミング実行: 多数のGPUにワークロードを分散させる実験的機能 オプション1: 単一GPUの柔軟性を高めるUVM データセットサイズがGPUのVRAMを超える場合、NVIDIA UVM技術を利用することができます。UVMは、システムRAMとGPU VRAMの間で統一されたメモリスペースを作成し、VRAMが満杯になったときにデータをシステムRAMに転送することで、メモリ不足エラーを防ぎます。これは、単一GPUで作業を行う場合に適しており、データセットが稍微大きい場合にも対応できます。コード変更はほぼ必要なく、シームレスな体験を提供します。 ただし、データの(system RAMとVRAM間の移動にはパフォーマンスのペナルティが伴うことがあります。Rapids Memory Manager (RMM)を賢く設定することで、このパフォーマンスコストを大幅に削減できるでしょう。RMMは、GPUメモリの割当を微調整するためのライブラリです。 詳細については、Polars GPU EngineのUVM導入についての深掘り記事[Introducing UVM for Larger than VRAM Data on the Polars GPU Engine]をご覧ください。 オプション2: TBスケールでのパフォーマンス向上を実現するマルチGPUストリーミング実行 数百GB以上のテラバイト(TB)スケールのデータセットを処理する場合、ポラースGPUエンジンは新たな実験的なマルチGPUストリーミング実行機能を提供しています。このストリーミング実行は、データのパーティショニングと並列処理機能を導入し、ワークロードを複数のGPUに分散させて効率的に処理します。 ストリーミング実行者は、ポラースが生成する最適化された内部表現(IR)グラフをバッチ実行用に書き換え、データサイズと利用可能なワーカー数に基づいてグラフを分割します。各パーティションは独立して処理され、タスクベースの実行モデルで並列処理が可能となっています。 この機能は、Dask同期スケジューラーによる単一GPU実行と、Dask分散スケジューラーによる多GPU実行をサポートしています。ジョイント戦略やパーティションサイズなどを制御するためのパラメーターも用意されています。 テストでは、PDS-Hベンチマークで3TBスケールのデータセットを秒単位で処理できました。この機能の詳細と動作原理については、NVIDIA GTC Parisセッション[Scaling DataFrames with Polars]をご覧ください。 適切な方法を選ぶ UVMとマルチGPUストリーミング実行は、どちらもポラースGPUエンジンを使って大容量データを処理する強力な手法です。最適な選択肢は、具体的な要件によって変わります。 詳細な設定方法や使い方に関しては、Polars User Guideをお読みください。 業界の反応と会社概要 ポラースのこれらの新機能は、ユーザーからの評価が高く、特に大規模データの処理において劇的なパフォーマンス向上が報告されています。「 financial data analyst の一人は、UVMが数百GBのデータを扱う際のメモリ不足問題を解決し、大幅なパフォーマンス改善をもたらしたと述べています」とコメントしています。 ポラースは、Pythonベースの高速データ処理フレームワークであり、そのGPUエンジンは、現代のデータ処理タスクに必要な性能とスケーラビリティを提供しています。