AIがALSの神経ネットワーク変性を予測、治療戦略の実験設計に活用へ
エディンバラ大学、コペンハーゲン大学、ドレクセル大学の研究チームが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)における神経ネットワークの変性パターンを予測するAIモデルを開発した。この研究は『Neurobiology of Disease』に掲載され、従来の動物実験や培養細胞実験に加え、計算モデルを新たな補完的手法として活用する可能性を示している。ALSは脳と脊髄の運動ニューロンに影響を及ぼす神経難病で、世界で年間10万人あたり約2人が発症。スコットランドでは年間約200人が診断される。 ALSの多くは脊髄から発症し、筋力低下、筋緊張、けいれんといった初期症状が現れる。従来はマウスを用いた遺伝子改変モデルで病状の進行を観察していたが、時間と費用の制約から特定の時系列でのみ観察可能だった。一方、今回開発されたAIモデルは、生物学的に妥当な神経ネットワークを基にした数理モデルで、電気的スパイク信号で情報を伝える仕組みを再現。脊髄内の神経細胞の種類と接続パターンを生物学的データに基づいて構築し、各ニューロンの興奮度を計算する。 研究チームは、ALSの進行を「特定の神経集団からニューロンを削除し、接続数を減らす」という方法でシミュレーション。治療戦略も同様にモデル化でき、ニューロンを保存するか、通信を強化する条件を試すことが可能。コペンハーゲン大学のポスドク研究者ベック・ストローマー氏は「モデルでは治療により特定の神経集団が保存されると予測したが、実際に治療されたマウスの脳でその予測が確認された」と説明。この結果は、モデルが実験研究を効率化する有効なツールであることを示している。 研究責任者であるエディンバラ大学のイルリ・アローディ博士は「モデルで導かれた仮説は動物実験で検証すべきだが、モデルは実験の方向性を明確にする」と強調。今後は認知症の神経回路変化の解明にも応用する予定で、AIを活用した神経科学の新たな道が開かれつつある。
