AIが科学のすべての段階を支援する新アシスタント「デナリオ」登場
科学者を支援するAIアシスタント「Denario」が、ケンブリッジ大学、フラットアイロン研究所、バセロナ自治大学の研究者らによって開発された。このシステムは、大規模言語モデル(LLM)を活用し、研究のあらゆる段階——仮説の構築、文献の分析、データ処理、論文作成——を一連のAIエージェントで自動化する。Denarioの特徴は、単一のタスクにとどまらず、研究の全工程を連携して行える「モジュール型」アーキテクチャにある。ユーザーはデータと目的を入力すると、最初のエージェントが研究テーマを立案。次に、既存の研究を検索し、新規性を確認。その後、分析方法の設計、コードの作成・実行、結果の解釈、最終的に論文の作成・校正までをAIエージェント群が連携して実行する。このプロセスは、CMBAgentと呼ばれる多エージェントシステムが支えている。 Denarioは、2025年10月にarXivに掲載された論文で紹介され、アストロフィジクス、神経科学、化学、材料科学など多分野のデータで数百回のエンド・トゥ・エンドテストが実施された。その結果、約10%の出力が有意義な発見や新たな研究課題を生み出したが、残りは不適切と判断された。また、Denarioは時折「幻覚(hallucination)」を引き起こし、架空のデータを生成する問題も発覚。そのため、研究者による人間の検証が不可欠とされている。また、結果の不確実性の表現や、既存研究の明確な引用の欠如も課題として挙げられている。 開発チームは、Denarioが科学の「多分野融合」を促進する可能性に注目している。専門家が無関心としがちな他の分野のアイデアをAIが組み合わせることで、従来の枠組みを超えた発想が生まれる。また、研究者に時間を与えることも目的の一つ。文献のスキャン、図表の整形、分析の要約など、反復的で時間のかかる作業をAIが担い、研究者に創造的思考に集中する余裕をもたらす。次期バージョンでは、低品質出力を自動フィルタリングする機能の導入が計画されている。 Denarioは、AIの倫理的・技術的課題にも直面している。著作権、著者性、情報の信頼性の確保が重要な議論課題。研究チームは、AIの活用にあたって透明性と責任ある運用の必要性を強調し、学界と産業界の協働によってのみ実現した技術であると述べている。Denarioは科学のスピードと幅を広げる可能性を秘めつつ、人間の知性と判断が不可欠な「協働型AI」としての役割を果たすことが期待されている。
