AIと分子シミュレーション融合で植物と微生物の相互作用を解明
米エネルギー省オールドリッジ国立研究所(ORNL)の研究チームが、人工知能(AI)と分子動力学シミュレーションを組み合わせた新技術を開発し、植物と有益な微生物の相互作用のメカニズムをより正確に解明する手段を実現した。この技術は、植物が微生物とコミュニケーションを取る際に使う化学信号(リガンド)と、それらを認識するタンパク質の結合様式を高精度で予測できる点で、画期的だ。 特に注目されたのは、植物と根粒菌などの共生を促す「リポチトオリゴサッカライド(LCO)」と呼ばれる大きな柔軟性を持つリガンド。従来のAIツール、たとえばAlphaFoldは、小分子の薬物に特化しており、動的変化を考慮したシミュレーションが難しいという限界があった。ORNLの研究チームは、分子動力学(MD)シミュレーションによるタンパク質の動きの広範な解析と、機械学習(ML)を融合した「MD/ML」アプローチを開発。この手法は、タンパク質の柔軟性や動的な構造変化を反映し、実験結果と一致する高い精度で結合強度を予測できた。 この技術は、オールドリッジの超高速スーパーコンピュータ「Frontier」と「Summit」で実行され、研究のスピードアップとコスト削減を実現。植物の遺伝子がどのような微生物と最適なパートナーシップを築くかを特定できるため、肥料依存を減らし、成長速度とバイオマス生産を高める植物の設計が加速される。その応用は、バイオ燃料や化学物質、材料の生産にもつながり、エネルギー・食料安全保障の強化と米国のバイオテクノロジー競争力の向上に貢献する。 研究の共同リーダーらは、「タンパク質は静的ではなく、常に動いている。この現実を反映できるのがこの技術の強み」と強調。また、医薬品の再利用や疾患治療の理解にも応用可能とし、植物・微生物相互作用研究の新たなツールとしての価値を高めている。
