AI が海洋生物の深海の秘密を解明
北大西洋の深海底には、氷河期を生き抜いた巨大なサンゴ礁が存在しますが、産業漁業や深海採掘、気候変動といった現代の圧力に耐えられるかは、データが不足しているため不明です。これらの脆弱な海洋生態系を保護するためには、まずその存在を特定する必要があります。 そこで登場したのが、世界の研究アーカイブに眠る無数の海中映像とビデオを人工知能(AI)で解析するプロジェクト「Deep Vision」です。過去 20 年間に自律型水中車両などによって収集された映像量は膨大ですが、人間が分析するには一つのダイブにつき 2 か月を要し、その結果、映像の半数以上が未検討のまま放置されています。しかし、2022 年の研究では、AI を活用することで 5 万 8,000 枚以上の深海画像を 10 日以下で処理し、深海 1,200 メートルに生息する脆弱な指標生物であるゼノフロフォアの分布をマッピングすることに成功しました。 AI の最大の利点は、人間の判断に存在するばらつきを排除できる点にあります。専門家の間や同一人物の異なる時での分類の違いを補い、AI は一貫性のある誤りしか起こさないため、その誤りを特定・修正・管理することが可能です。Deep Vision は、深海の「森」とも呼ばれるサンゴや海綿といった生物に焦点を当て、これらが生態系の崩壊を防ぐ鍵となる存在であることを明らかにしています。 AI によって生物多様性の観測データが抽出されれば、次は生息地適応モデルを構築し、カメラが撮影した特定の場所を超えて、海洋保護区域の設置場所を決定する上で有用な予測地図を作成できます。深海の生物は栄養の循環や炭素循環に重要な役割を果たしており、地球の生命維持システムに不可欠です。このプロジェクトが大西洋での成功を収めれば、太平洋やインド洋、南極海など、同様にデータ不足に悩む他の海洋盆地にも手法を広げ、深海底の秘密解明と保全に貢献できるでしょう。
