AIが自ら科学を発見する「サイバーアカデミア」、化工分野で自律的研究エコシステム実現
中国石油大学(北京)の周天航副教授らの研究チームが、AIを活用した「サイバーアカデミア・ケミカルエンジニアリング」(Cyber Academia-Chemical Engineering)を構築し、化学工学分野におけるAI主導の科学発見の新モデルを実現した。このシステムは、分子設計、中試放大、工程検証、実験開発、理論解析、プロセス安全、品質管理の7種類の専門AIエージェントが集結する「デジタル学术小镇」として機能。各エージェントは互いに議論し、問題を発見・解決するだけでなく、理論分析から実験検証、工学的最適化までを自律的に連携して実行する。 従来のAIは明確に定義された課題に応じて動作するにとどまるが、本システムは「自発的な研究進化」と「出現型の科学発見」を可能にした。特に、人間の直感では気づきにくい「暗知識」——つまり隠れた科学的関連性——をAIが探知・発掘する可能性を示した。研究チームは、AIが単なるツールではなく、自ら研究テーマを創出し、複数分野を横断して協働する「研究主体」としての役割を果たすことを目指した。 初期の実験では、AIエージェント間の対話が抽象的になり、技術的な「幻覚」(誤った主張)が頻発した。これを克服するため、研究チームは「三重知識強化機構」を導入。まず、各専門分野に特化した知識ベースを搭載。次に、検索増強生成(RAG)とドメイン適応型微調整を組み合わせ、専門性を高めた。さらに、語義の隔たりを解消するため、本体工学(Ontology Engineering)に基づく「協調エージェント(CA)」を導入。これにより、異なる専門分野のAIエージェント間の誤解を大幅に低減し、有効な協働が可能になった。 評価結果によると、知識強化により各エージェントの対話品質が平均10〜15%向上。特に、分子設計とプロセス安全の間で発生していた概念の混乱が解消され、実用的な技術的解決策が生成された。 この成果は、AIが単なる作業支援を超えて、科学の「発見プロセス自体」を自律的に進化させる可能性を示している。研究チームは、この技術を自らの産業実装プロジェクト「中海储能」で活用。同社は鉄クロム液流電池の開発を進めており、既に「FlowBD」と「分子—電網工業知能体」を実用化している。今後、サイバーアカデミアの知見を実産業現場に適用し、AI主導の技術革新の実証を進めるとともに、AIによる科学発見の新しいパラダイムを確立する予定だ。
