AIが解明した溶酶体運動の制御機構:内質網の接合点が細胞内交通の鍵に
中国科学院自動化研究所の多模態人工知能システム全国重点実験室・計算生物学と機械知能(CBMI)チームが、AIを活用して細胞内における内溶酶体の運動制御メカニズムを世界で初めて系統的に解明した。内溶酶体は物質の輸送・分解・シグナル伝達を担う重要な細胞小器官であり、その細胞質内での「走走停停」という複雑な運動は、神経変性疾患や代謝疾患の発症と深く関連しているが、その制御機構は長年にわたり未解明だった。 本研究では、深層学習に基づく画像解析技術を用いて、数千本の内溶酶体の運動軌跡を自動再構築。これにより、細胞内の空間的分布や微環境特性を高精度に抽出し、内質網(ER)のネットワーク節点が内溶酶体の運動状態を切り替える「制御中枢」として機能していることを発見した。内溶酶体はERの接続点で、高速の全体移動、低速の局所移動、あるいは一時的な停止の3つの状態をとることが明らかになった。特に、停止時には内体と溶酶体の瞬時の相互作用や細胞小器官の分裂が頻発しており、細胞骨格と内膜系の精密なシグナル連携が存在することが示された。 従来の研究は手動での軌跡追跡に依存しており、高スループットデータや病態下の複雑な運動を網羅的に解析することが困難だった。本研究は、単粒子追跡、空間分布解析、ERの形態解析を統合した自動化画像解析パイプラインを構築し、データから「観察」から「メカニズム解明」への飛躍を実現した。 成果は国際学術誌『Science Advances』に掲載され、中国科学院が展開する「磐石科学基礎大モデル」と「磐石・デジタルセルプラットフォーム」に統合される予定。中国科学院自動化研究所の李文静副研究員が論文の第一著者、楊戈研究員が責任著者を務め、生物物理研究所の胡俊傑研究員らと共同研究。研究は国家自然科学基金、中国科学院先導科学研究プロジェクト、国家重点研発計画、中央財政補助事業費などの支援を受けて実施された。
