トランプ政権のH-1Bビザ費用引き上げが企業に与える影響:テック業界に波紋
ドナルド・トランプ元大統領が発表した新しいH-1Bビザ費用が、米国企業に大きな影響を及ぼす可能性がある。同政策では、外国の専門職労働者を雇用するためのH-1Bビザ1件につき10万ドルの費用が課される。この費用は既存のビザ保持者には適用されないが、新規申請者にのみ適用されるため、企業の採用戦略に大きな変化が生じる見通しである。 特に影響が大きいのは、人材獲得に依存度の高い業界だ。大手テック企業はビザを大量に申請しているが、財務力に優れるため、10万ドルの費用は経費の一部に過ぎない。ただし、年間数千件の申請を行う規模では、総額が数億ドルに達する可能性がある。一方、スタートアップは資金力に乏しく、高額な費用を負担できるのは上級エンジニアに限られる。結果として、若手人材の採用が難しくなり、新興企業の成長に支障が出る恐れがある。 コンサルティング業界も深刻な影響を受ける。すでに人材不足が深刻化している中、追加のコストが採用のハードルをさらに高める。多くの企業は、インドやメキシコ、フィリピン、アルゼンチンなどにオフショア拠点を設けることで、ビザの必要性を回避する戦略を強化している。 ウォール街の金融機関も同様に影響を受ける。JPMorganやゴールドマン・サックス、シティグループなどはそれぞれ1,000件以上のH-1B申請を抱えており、特に技術系の役職に依存している。ただし、金融業界ではトレーダーや投資銀行家が優先されるため、技術職の採用はやや後回しになりがち。それでも、若手銀行員の採用が制限されれば、中長期的な人材育成に悪影響が出る。 経済学者らは、この政策が米国の技術力と国際競争力に悪影響を及ぼす可能性を指摘している。トランプ政権が掲げる「製造業の復活」「移民規制強化」「価格安定」という三本柱は、互いに矛盾するため、同時に達成するのは極めて困難だと分析されている。企業は今後、人材戦略の見直しを迫られ、労働力の多様性とコストのバランスを再考する必要がある。
