NextSilicon、Maverick-2でデータフロー型「スーパーチップ」実現へ HPC向け64bitデータフローエンジンと自社RISC-VプロセッサArbelを同時発表
次世代半導体企業NextSiliconが、高性能計算(HPC)向けに独自開発した「Maverick-2」データフロー処理エンジンを正式発表した。同社は8年間、合計3億300万ドルの資金調達を経て、2024年10月にこのプロセッサを実用化。Maverick-2は、従来のCPUやGPUとは根本的に異なる「データフロー型アーキテクチャ」を採用し、計算の中心に数百から数千の演算ユニット(ALU)を連携させた構造を持つ。これにより、従来の「バーチャルメモリ」や「命令順序制御」に依存するVon Neumannアーキテクチャの過剰なオーバーヘッドを大幅に削減。実際、Maverick-2は540億トランジスタを搭載し、そのうち98%以上が計算処理に割り当てられる。これにより、電力効率とスループットがGPUを上回る性能を実現。 Maverick-2は、HPC分野で特に重視される64ビット浮動小数点演算に最適化されており、サンディア国立研究所が初の量産システム導入を予定している。同社は、2022年に発表されたMaverick-1のプロトタイプ開発でも協力しており、実証実験の実績を持つ。Maverick-2は、単一チップ(TDP 400W)とOAMソケット対応の2チップ構成(TDP 750W)の2種類が登場。ベンチマークでは、GUPSテストでCPUの22倍、GPUの6倍の速度を記録。STREAMでは5.2TB/sのメモリ帯域を達成し、GPU比1.86倍の効率を示した。HPCGテストでは600ギガフロップスを達成、GPUと同等の性能ながら消費電力は半分に抑えられた。 また、NextSiliconは自社開発のRISC-Vプロセッサ「Arbel」も同時に発表。これは32個のEコアを搭載し、Intel「LionCove」やAMD「Zen5」と同等の性能を実現。Maverick-2と組み合わせることで、CPUとアクセラレータが統合された「スーパーチップ」を構築可能。特に注目すべきは、既存のC/C++/Fortranコードを自動的にデータフロー構造に変換・最適化する独自コンパイラ。コードの実行中に継続的に最適化が行われ、人為的な移植作業が不要。この「自己最適化」機能により、開発者は高レベルのコードを書くだけで、並列処理に最適化されたハードウェア上で実行できる。 Maverick-2は、AIやHPC用途に加え、将来的なスケールアップ・スケールアウトネットワークによる拡張も視野に入れている。NextSiliconは、HPC市場における新たな計算基盤として、データフロー型アーキテクチャの実用化を推進している。
