AIが核融合炉内の「安全領域」を高速で特定する新技術を開発
米国エネルギー省(DOE)のプラズマ物理学研究所(PPPL)とオークリッジ国立研究所、民間企業のコモンウェルス・フュージョン・システムズ(CFS)が連携し、核融合炉内部の「磁気影(マグネティックシャドウ)」――高温のプラズマから守られる安全な領域――を高速に特定する人工知能(AI)技術「HEAT-ML」を開発した。このAIは、核融合炉の構造設計や運転管理の効率化に大きく貢献する可能性を秘めている。 核融合は太陽のエネルギー源であり、無限に近いクリーン電力の可能性を秘めるが、プラズマが1億度を超える高温になるため、炉壁が溶けるリスクがある。そこで、磁場でプラズマを閉じ込める「トカマク」構造内において、どの部分がプラズマの熱から守られているかを把握することが極めて重要だ。従来、この情報を得るためには「シャドウマスク」と呼ばれる3D地図を作成していたが、計算に30分以上かかっていた。 HEAT-MLは、この課題を解決するため、深層学習型AIを活用。CFSのSPARCトカマク(2027年までにエネルギー収支のプラスを実証する予定)の一部を対象に、約1,000回の従来シミュレーションデータを学習させた。これにより、磁場線が内部構造と交差するかどうかを数ミリ秒で判定可能に。従来の30分から比べて、1000倍以上の高速化が実現した。 研究責任者であるマシュー・チャーチル氏は、「既存のシミュレーションコードにAIを組み込むことで、有用な答えを得るスピードが飛躍的に向上し、制御やシナリオ設計の可能性が広がる」と述べた。第一著者でPPPLの研究物理学者ドメニカ・コロナ・リベラ氏も、「プラズマが構造部品に接触すれば運転停止を余儀なくされる。安全な領域を正確に把握することは命取りの問題だ」と強調した。 現在はSPARCの排熱システムに特化した限定的な利用だが、今後はさまざまなトカマク構造や他のプラズマ面構成部品への適用を目指している。DOEとCFSの支援のもと、この技術は核融合発電の実現に向けた重要な一歩と位置づけられている。
