世界中の農家向けにAIが最適な野菜品種を特定する支援を開始
スイス・バーゼル発—バイオテクノロジー企業のシングента・ベジタブルシードズと人工知能(AI)企業のヒアリタブル・アグリカルチャーは、AIを活用した野菜種子の最適な地域配置を実現する共同プロジェクトを開始した。この提携は、気候変動や多様な土壌条件が進む中で、世界中の農家が最も適した品種を選べる仕組みを構築することを目指している。 シングENTAは150年以上にわたり野菜種子の品種改良に取り組んできた世界最大規模の種子企業で、60カ国以上で現地チームを展開し、124カ国に種子を輸出している。しかし、品種数が数千に及ぶ中で、各地域の気候、土壌、栽培環境に最適な品種を迅速に特定するのは極めて困難だった。従来は膨大なフィールドトライアルと農家のフィードバックに頼っていたが、このプロセスは時間とコストがかかり、変化の速い気候に追いつきにくかった。 今回の提携では、Google X(アルファベット傘下の「ムーンショットファクトリー」)で設立されたヒアリタブルが、シングENTAのグローバルな品種データと過去の栽培実績、気象・土壌データを統合し、AIアルゴリズムで「遺伝子×環境」の複雑な相互作用を解析する。目標は、10メートル単位の高解像度で、特定の地域における品種のパフォーマンスを予測すること。これにより、農家は単に「高収量」ではなく、「その土地で最も安定して成長する品種」を選べるようになる。 マシュー・ジョンストン氏、シングENTA・ベジタブルシードズのグローバルヘッドは、「正しい種を植えることは農家の成功の鍵。AIは、最新のイノベーションを現場に届ける強力なツールだ」と語る。同社はすでにCropwise AIというAIチャットボットを導入し、デジタルプラットフォームを通じて農業のデジタル化を進めており、今回の提携はその一環として、食料安全保障と持続可能な農業の実現に向けた重要なステップと位置づけられている。 ヒアリタブルのブラッド・ザムフトCEOは、「AIを農業のあらゆる分野に応用する可能性が広がっている。シングENTAとの連携は、技術が農業の実践に与える影響を示す好例だ」と強調。この取り組みは、気候変動による収穫不安定化に対応し、世界の食料供給の安定化に貢献する可能性を秘めている。 背景として、気候変動により極端な天候が頻発する中、従来の品種選定では対応が遅れるリスクが高まっている。AIによるデータ駆動型の意思決定は、農業の効率化と持続可能性を両立させる新たな道筋を示している。専門家からは、「AIと農業データの融合は、次世代のスマート農業の基盤になる」との評価が広がっている。
