AIアルゴリズムが天気データから物理的に解釈可能な方程式を抽出、予報精度と科学理解の両方を向上
気象データから物理的に解釈可能な情報を抽出する新アルゴリズム「WSINDy」が、天気予報の精度向上と気象の物理法則の解明に貢献する可能性を示した。このアルゴリズムは、弱形式スパース非線形ダイナミクス同定(Weak form Sparse Identification of Nonlinear Dynamics)の略で、機械学習と物理法則の融合を目指す「弱形式科学的機械学習(WSciML)」の一つ。研究チームは、この手法がシミュレーションデータだけでなく、実際の気象観測データからも既知の気象物理方程式を正確に再現できることを実証した。 長期間の天気予報は、気象システムの混沌性(カオス性)により困難である。従来の数値モデルは、温度、風速、気圧などの観測データをもとに、物理的過程を表す「パラメータ」を用いて予測を進めているが、これらのパラメータは数千万から数億に及ぶため、その意味が研究者にとって解釈しにくく、科学的理解の深化に寄与しにくいという課題があった。 一方、GraphCastやFourCastNetといったAIモデルは、膨大なデータから高精度な予測を可能にしたが、その内部構造は「ブラックボックス」であり、物理的な意味を持つ方程式としての解釈が困難だった。これに対してWSINDyは、データから直接「物理的に意味のある方程式」を発見する。実験では、乱流の気象流体データ(温度、圧力、風速など)を入力し、風速や渦度の生成過程を再現。特に、全球規模の実観測データを用いても、気象の基本的な支配方程式を再構築できることを確認した。 研究チームは、このアルゴリズムが観測ノイズの高いデータにも強いこと、また、気象にとどまらず、核融合反応や感染症の流行、細胞間の連携による創傷治癒など、さまざまな科学分野への応用が期待できると指摘している。ただし、風の実際のモデルをより正確に同定できるよう、さらなる改良が必要だと述べている。 この成果は、AIが単なる予測ツールにとどまらず、科学的知見の発見に貢献する新たな道を開く可能性を示している。
