企業のイノベーション圧力がAI導入の判断に歪みを生む状況が明らかに。新たな調査で、効果に疑問があるにもかかわらず、AI関連支出が拡大する傾向が指摘された。
企業の意思決定者がAIを「トロイの木馬」として活用し、ソフトウェアの購入を承認させようとしている傾向が、Emburseの新調査で明らかになった。同社はAIを活用した出張・支出の最適化を推進する企業として知られ、米国と英国の企業意思決定者1,500人を対象にした調査を実施。その結果、58%の回答者が「AIを含むツールの導入は、非AIツールより承認がしやすい」と回答。さらに62%が、実際の目的がAIにかかわらず、資金調達のため「AI関連のプロジェクト」として提案していると認めた。この現象は、AIが単なる技術革新以上の戦略的価値を持つようになり、経営層の関心を引く「スイートスポット」となっていることを示している。 背景には、AI導入が企業のデジタル変革の象徴とされ、経営陣の戦略的優先事項に位置づけられていることがある。AIは、生産性の向上、コスト削減、意思決定の質の改善といった明確なビジネスインパクトを示すとされ、その「正義」の色が、実際の機能にかかわらず、予算獲得のカギとなる。そのため、単なる会計ソフトの更新や、従来の業務支援ツールの刷新でも、AIと名前をつけることで、承認のハードルが下がる傾向が顕著に現れている。 この調査は、AIの「ブランド価値」が、技術的実力以上に、組織内での意思決定プロセスに影響を与えていることを示している。特に、IT部門や財務部門のリーダーは、AIと名前をつけることで、予算の獲得が容易になるという戦略的知恵を活用している。しかし、この現象にはリスクも伴う。AIと名前をつけて承認されたツールが、実際にはAI機能をほとんど持たない場合、企業は無駄な支出をし、期待に応えられない投資に終わる可能性がある。また、AIの真の活用が遅れ、戦略的インフラの整備が不十分になる懸念もある。 Emburseは、こうした「AIの名前を借りた戦略」の背後にある、AIの本質的な価値を再考する必要性を強調している。AIは単なるマーケティング用語ではなく、支出の可視化、予算の自動調整、リスクの予測など、実際の業務効率を高める基盤技術である。企業は、AIの名前を借りるのではなく、AIの本質的な機能とビジネス成果の連携を重視した意思決定を進めるべきだと提言している。 専門家からは、「AIは戦略的資産として扱われるべきだが、単なるトピックとして扱われる傾向は、長期的に企業のDXの質を下げる」との指摘がある。また、Emburseは、AIと連携した支出管理プラットフォームを通じて、AIの効果を可視化し、実際のコスト削減や業務効率化を証明する仕組みを提供している。このように、AIの「名前」ではなく、「成果」に注目する文化の醸成が、今後の企業のAI活用の鍵となるだろう。
