大学がAI導入で知的自律性を失いかねない危機
大学がAIの急拡大に伴い、学問的自律性を失いかねない。ミネソタ大学の学習技術専任准教授ブリーナ・ダミアナ・ハインスフェルト氏は、教育機関が大手テック企業のAI戦略に従い、知識や真実、学問的価値の定義を企業に委ねていると警鐘を鳴らしている。彼女は、テクノロジーの社会的影響を分析する教育プラットフォーム「Civics of Technology Project」のエッセイで、大学がAIベンダーとの数千万ドル級の提携を結び、教室に企業のブランドが浸透する中で、技術の「正統性」が企業のアイデンティティと一体化していると指摘。 AIは単なるツールではなく、効率の美徳、スケールの価値、データが真実の基準であるという「価値観」を内包している。こうしたシステムを批判的に検証せずに導入すれば、学生は「テック企業の論理が自然で不可避」と学び、学問の本質が技術の支配下に置かれる危険があると警告する。 その一例として、カリフォルニア州立大学が2月に1690万ドルの契約を結び、23キャンパスにChatGPT Eduを導入。2026年までに46万人以上の学生と教職員に提供。夏にはAWS主導の「AIキャンプ」を開催し、会場にはアマゾンのロゴやノート、グッズが至る所に配置された。 この現象は、教育のあり方そのものに影響を及ぼしている。イギリス・ノースンブリア大学のビジネス・マーケティング教授キムバリー・ハードキャスト氏は、生成AIの普及により、学生の「認知的中介者」(世界を理解するための手段)が人間からアルゴリズムに移行していると指摘。彼女は、課題の設計を根本から見直す必要があると主張。学生に「結論に至るプロセス」「AI以外の情報源の選定」「一次資料による検証」を明示させるべきだと訴える。また、授業中に「エピステミック・チェックポイント」を設け、学生が「このツールで思考を補強しているか、置き換えているか」「概念を理解しているか、AIの要約を再現しているだけか」と自問する機会を設けるべきだと提言。 ハインスフェルト氏は、「教育の場は、ツールの構造に向き合うべき空間である」と強調。そうでなければ、教育は「それを批判すべきシステムの実験室」に堕してしまう。ハードキャスト氏も、未来は学生がAIの答えを受け入れる瞬間の一つ一つに影響されるという。 大学は、技術を操るだけでなく、それを問い直す力を育てる場であるべきだ。
