AI企業同士の知的財産争いが波紋:Scale AI、競合Mercorと元幹部に盗用容疑で提訴
AIデータラベリング企業のScale AIが、競合企業のMercor Inc.と元幹部のEugene Ling氏を相手に、知的財産の不正使用を訴える訴訟をカリフォルニア州連邦裁判所に提起した。この事件は、エロン・マスク氏が率いるxAIが同様の盗用疑惑で訴訟を起こしたばかりの直後であり、AI業界の激しい競争と知的財産保護の重要性を浮き彫りにしている。Scaleは、Ling氏が在籍中に100件以上の機密文書(顧客戦略や製品情報など)を個人のGoogleドライブにダウンロードし、MercorのCEOと会談した後、同社の営業活動としてScaleの主要顧客「顧客A」と連絡を取り、ビジネスを奪おうとしたと主張している。訴状によると、この行為により数百万ドル規模のビジネス損失が発生したとされる。 Ling氏はSNSで「どのScaleのファイルも使っていない」と主張し、「悪意は一切なかった」と釈明。また、Mercorチームへの迷惑を詫びている。一方、Mercor共同創業者のSurya Midha氏は、同社がScaleの知的財産を意図的に使用していないと否定。同社は、Ling氏が個人ドライブに古い文書を残していたことを知り、6日前にその削除を提案したと説明。しかし、Scaleは「削除は証拠を消す行為であり、法的措置に支障をきたす」と反論。同社は損害賠償、訴訟費用、使用禁止命令、および文書の返還を求めており、訴訟は「Scale AI Inc. v. Mercor.io Corporation, 25-cv-07402」の番号で進行中。 この訴訟は、Metaからの150億ドル投資を受け、290億ドルの評価額を記録したScaleにとって、CEOのアレクサンドル・ワン氏のMeta移籍や14%の人員削減と重なり、内部の不穏な状況を背景にしている。また、マスク氏のxAIも、前エンジニアのZhihao「Zack」Li氏がGrok開発の機密情報を盗み、OpenAIに移籍したとして同様の訴訟を提起。Li氏は7月にOpenAI就職を決めており、700万ドル相当の株式を売却。内部会議で文書の持ち出しを認めたが、削除で痕跡を消そうとしたとされる。 AI業界では、データ戦略や顧客関係が競争力の鍵であり、知的財産の保護が企業存続の根幹にかかっている。こうした訴訟は、技術の進化とともに、企業が法的手段で自社の立場を守ろうとする潮流の表れでもある。Scaleの広報担当者Joe Osborne氏は「独自のイノベーションと実行力で業界をリードしてきた。不正な手段で利益を得る行為は許さない」と強調。AI企業の成長期に、知的財産の守備と法的対応が、新たな競争の「前線」となっている。
