AIが細胞内の遺伝子断片解析で隠れた疾患サインを発見 マギル大が新ツールDOLPHINを開発
マギル大学の研究チームが、細胞内の遺伝的構成要素を分析することで、従来の手法では見つけられなかった病気の兆候を検出できる人工知能(AI)ツール「DOLPHIN」を開発した。この成果は、『Nature Communications』に2025年1月に掲載された。同ツールは、個々の細胞レベルでのRNA発現の微細な変化を捉えることで、病気の早期発見や治療法の最適化に貢献する可能性を秘めている。 研究の責任者であるジュン・ディン教授(マギル大学医学部准教授、マギル大学健康センター研究者)は、「このツールは、患者に最も効果的な治療法をマッチングする手助けになり、治療の試行錯誤を減らすことができる」と述べている。 従来の遺伝子レベルの解析手法は、細胞内の遺伝情報の変化を1つの遺伝子単位でまとめてしまうため、細かい変化が見えにくく、病気の兆候の一部しか捉えられなかった。一方、DOLPHINは、遺伝子が構成される小さな単位「エクソン」のつながり方まで細かく分析できる。研究チームによると、遺伝子は「複数の小さなパーツで構成されたレゴセット」のようなもので、エクソンの組み合わせ方が細胞の状態を決定すると説明している。 第一著者であるカイル・ソン博士課程学生は、「この組み合わせ方の違いが、これまで見過ごされてきた重要な病気のマーカーを明らかにする」と語る。実際、膵臓がん患者の単一細胞データを解析した結果、従来の手法では検出できなかった800以上もの病気マーカーを発見。また、進行性の高リスクがんと軽症の患者を正確に区別できた。 この技術は、将来的な「仮想細胞」の構築にもつながる。DOLPHINは従来の手法よりも豊かな細胞プロファイルを生成し、薬剤の反応をコンピュータ上でシミュレーションすることで、実験や臨床試験の前に効率的な評価が可能になる。研究チームは今後、少数のデータから数百万細胞規模の解析へと拡張し、より正確な仮想細胞モデルの実現を目指す。
