AIのせいじゃない、米労働市場の低迷は金利政策の影響が本質
アメリカの雇用市場の悪化は、AIの進化によるものではない。左派の財政政策研究機関「センター・フォー・バジェット・ポリシー・アンド・プライオリティーズ」の首席経済学者、Gbenga Ajilore氏は、「AIはまだ私たちの生活の一部にすぎず、経済は『凍結状態』にある」と指摘する。2022年以降、求人数の減少と株価の上昇が分離する「世界で最も恐ろしいチャート」と呼ばれるグラフが注目されたが、その背景にはAIの登場ではなく、連邦準備制度理事会(FRB)による金利の急上昇がある。2022年から2024年にかけて、連邦基金金利は5ポイント以上上昇。この政策はインフレ抑制のためのもので、企業の資金調達コストを高め、採用や投資を抑制する結果となった。 実際、2021年から2022年にかけては求人需要が急増し、労働力不足が深刻化した。しかし、金利上昇の影響で2022年以降、テクノロジーや金融、不動産業界で一斉に採用停止やリストラが発生。2023年以降のFRBの「ベイジ・ブック」では、「金利の上昇が活動を圧迫」「労働需要が弱まった」との記述が相次いだ。AIは一部の業界(例:コールセンター、会計)で業務効率化に貢献しているが、広範な雇用削減の主因ではない。 経済学者たちは、AIが労働市場に大きな影響を与えるのは「数年、あるいは数十年先」だとみる。AIは単純作業の自動化には有効だが、人間の判断力や創造性、複雑な意思決定を代替するには至っていない。FRBのジェローム・パウエル議長も、AIは「物語の一部ではあるが、大きな部分ではない」と述べ、金利政策の影響がはるかに大きいと強調した。 また、貿易政策の不確実性、移民減少、連邦政府の効率化(DOGE政策)なども、労働市場の冷え込みに寄与している。企業は「AIによる生産性向上」を理由にリストラを説明するが、実際は高金利とコスト圧力が本質的な要因だ。AIは未来の課題ではあるが、現状の雇用不況の主因ではない。経済の回復には、金利の緩和と政策の安定が不可欠である。
