
心電図検査は、心血管疾患の評価において最も頻繁に用いられる手法の一つである。しかし、過去10年間で、深層畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が従来の診断をはるかに超える情報を心電図(ECG)から抽出可能であることが示されてきた。たとえば、個人の年齢を予測するといった応用が可能である。本研究では、公開データセットを用いて、1次元CNNを2種類訓練し、ECGから個人の年齢を予測することを目的とした。モデルは、10秒間の12誘導ECGレコードを100Hzに再サンプリングしたデータを用いて訓練および検証を行った。訓練およびクロスバリデーションには59,355件のECGを使用し、別個のコホートから得られた21,748件のECGをテストセットとして用いた。訓練セットでのクロスバリデーション性能とテストセットでの性能を比較した。さらに、心臓専門医による注釈が付与された心血管疾患情報を用いて、テストセットの患者を分類し、特定の心疾患がCNNによる予測年齢と実年齢との乖離(差異)を大きくするかどうかを検証した。最も優れたCNNモデルは、Inception Timeアーキテクチャを採用しており、平均絶対誤差(MAE)の観点から、訓練セットでのクロスバリデーション時(7.90 ± 0.04年)とテストセットでの性能(8.3年)との間に顕著な性能低下が見られた。一方、平均二乗誤差(MSE)は、訓練セット(117.5 ± 2.7年²)からテストセット(111年²)へと改善した。また、MAEの観点で予測年齢と生物学的年齢の乖離が最も大きかった心血管疾患は、ペーシングリズムを示す患者(10.5年)であり、最も小さな乖離を示したのはQT間隔の延長を認める患者(7.4年)であった。本研究は、ECGを用いた深層CNNによる年齢予測に関する既存の知見を拡充するものであり、訓練に用いたコホートとは異なる別個のコホートからのテストセットにおけるモデルの性能を明らかにした。