
ネットワーク埋め込み(Network Embedding)は、ネットワーク内の頂点(ノード)に対して低次元表現を学習する重要な手法であり、ネットワーク構造を捉えかつ保持することを目的としている。現存するほぼすべてのネットワーク埋め込み手法は、浅いモデル(shallow models)を採用している。しかし、実際のネットワーク構造は非常に複雑であるため、浅いモデルでは高次元の非線形構造を十分に捉えることができず、最適なネットワーク表現が得られないという課題がある。したがって、高次元の非線形ネットワーク構造を効果的に捉え、同時に局所的および大域的構造を良好に保持できる手法の開発は、未解決でありながら極めて重要な課題である。本論文では、この課題を解決するため、構造的深層ネットワーク埋め込み(Structural Deep Network Embedding、略称:SDNE)と呼ばれる新規手法を提案する。具体的には、複数層の非線形関数を有する半教師あり深層モデルを導入することで、高次元の非線形構造を効果的に捉えることを可能にする。さらに、一次近接性(first-order proximity)と二次近接性(second-order proximity)を統合的に活用し、ネットワーク構造の保持を実現する。二次近接性は、教師なし部品においてネットワークの大域的構造を捉えるために用いられる。一方、一次近接性は、教師あり部品において局所的構造を保持するための教師情報として利用される。これらの近接性を半教師あり深層モデル内で共同最適化することにより、本手法は局所的および大域的構造の両方を良好に保持でき、疎なネットワークに対しても高いロバスト性を示す。実験において、言語ネットワーク、引用ネットワーク、および3つのソーシャルネットワークを含む5つの実世界ネットワークデータセットを用いて評価を行った。その結果、従来手法(ベースライン)と比較して、本手法は元のネットワークの再構成性能が顕著に向上し、マルチラベル分類、リンク予測、可視化の3つの応用タスクにおいても著しい性能向上を達成した。