
従来の無監督ドメイン適応(Unsupervised Domain Adaptation, UDA)の問題設定では、ターゲットドメインとソースドメインが同一のクラス集合を持つことが仮定されている。しかし実際には、ターゲットドメインのデータがソースドメインのクラスの部分集合から構成されており、かつターゲットデータがラベルを持たないため、どのクラスに属するかが不明であるような状況が存在する。このような問題は、文献において「部分的ドメイン適応(Partial Domain Adaptation, PDA)」として形式化されており、関係のないソースドメインのクラスに属するデータがドメイン適応に悪影響を及ぼす「負の転送(negative transfer)」問題により、特に困難な課題とされている。本研究では、ソースドメインにおける外れクラス(outlier classes)を段階的に検出することでPDA問題に対処する。その結果、負の転送の問題を回避できるより単純な無監督ドメイン適応問題に帰着される。具体的には、局所性保持射影(Locality Preserving Projection, LPP)を用いて、ターゲットドメインデータに対してラベル伝播(label propagation)アルゴリズムを適用可能な潜在的な共通部分空間を学習する。ラベル伝播の結果、特定のソースクラスにターゲットドメインデータがラベル付けされない場合、そのクラスは外れクラスと判定される。その後、検出された外れクラスをソースドメインから除去し、このプロセスを複数回反復して収束するまで繰り返す。Office31およびOffice-Homeという一般的に用いられるデータセット上で行った実験の結果、本手法はそれぞれ平均98.1%および75.4%の精度を達成し、既存手法を上回る最先端の性能を示した。