要約
道路ネットワークは通常、複雑な構造を有しており、分析対象となるデータには多様な時系列的特徴が含まれるため、グラフ構造に基づく交通量予測は困難な課題である。さらに、空間的特徴抽出の品質は、グラフ構造の重み設定に大きく依存する。交通分野においては、現在、道路間の距離などの要因に基づいてグラフの重みが計算されているが、これらの手法は道路自体の特性や異なる交通流間の相関関係を考慮していない。既存の手法は、通常、局所的な空間的依存関係の抽出に注目する一方で、グローバルな空間的依存関係は無視されがちである。また、グラフ構造の深さが限られている中で、十分な情報を抽出する方法も大きな課題である。こうした課題に対処するため、本研究では交通量予測のための「ランダムグラフ拡散アテンションネットワーク(Random Graph Diffusion Attention Network: RGDAN)」を提案する。RGDANは、グラフ拡散アテンションモジュールと時系列アテンションモジュールから構成される。グラフ拡散アテンションモジュールは、CNNのようにデータから学習して重みを調整することで、より現実的な空間的依存関係を捉えることが可能となる。一方、時系列アテンションモジュールは、時系列的な相関関係を抽出する。3つの大規模な公開データセットを用いた実験により、RGDANが最先端手法よりも2%~5%高い精度で予測を実現することが確認された。