
要約
本稿では、自律走行車(AV)の研究開発を支援するためのプラットフォーム「Pylot」を紹介する。Pylotの目的は、研究者が自ら開発したモデルやアルゴリズムの遅延(latency)と精度が、AVのエンドツーエンド走行挙動に及ぼす影響を検証できるようにすることである。この目的を達成するために、AVソフトウェアパイプラインの各コンポーネント(物体検出器、運動計画器など)を、タイムスタンプ付きメッセージを介してデータストリームで通信する演算子のデータフローグラフとして表現する、高性能なデータフローシステムを基盤とするモジュール構造を採用している。PylotはCARLAなど人気のあるAVシミュレータと容易に連携可能であり、実車への展開もコード変更を最小限に抑えて実現できる。単一コンポーネントの評価に向けた全体パイプラインの構築負荷を軽減するため、PylotはAVパイプラインの各コンポーネントについて、最先端の参照実装を複数提供している。これらの参照実装を活用することで、Pylotを基盤とするAVパイプラインは実車での走行が可能となり、CARLA自律走行チャレンジにおいても高いスコアを達成している。さらに、Pylotを活用した複数の事例研究も提示しており、コンテキスト依存型のコンポーネントの必要性や、各コンポーネントごとの時間割当の重要性に関する証拠が得られている。Pylotはオープンソースであり、コードは https://github.com/erdos-project/pylot で公開されている。