
要約
人工知能によるたんぱく質設計の進歩にもかかわらず、機能的な抗体をゼロから信頼性高く設計することは依然として難題でした。最近の研究では有望な結果が示されていますが、それでも数千から数百万の設計案を大規模な実験スクリーニングによって確実にヒットを見つける必要があります。本研究では、完全にデノボ抗体設計において16%のヒット率を達成する多モーダル生成モデルであるChai-2を紹介します。これは、従来の計算手法と比較して100倍以上の改善を示しています。私たちはChai-2に52種類の異なる標的に対する≤20の抗体またはナノボディを設計させるように指示し、AI設計から湿式実験検証までのワークフローを2週間以内で完了させました。重要な点は、これらの標的のいずれもProtein Data Bank(PDB)に既存の抗体またはナノボディバインダーがないことです。驚くべきことに、単一ラウンドの実験テストだけで、標的の50%に対して少なくとも1つの成功したヒットを見つけました。しばしば強い親和性と好ましい薬物プロファイルを持つものも見つかりました。 さらに、Chai-2はミニタンパク質設計においても68%の湿式実験成功率を達成しており、通常ピコモールレベルのバインダーを生成します。Chai-2の高い成功率により、新規抗体の迅速な実験検証と特性評価が2週間以内で可能となり、原子レベルでの精密な分子工学への新しい時代を開く道筋が整いました。