要約
顔画像からの血縁関係の検証は、コンピュータビジョン分野において興味深くかつ挑戦的な問題であり、これまでの文献においてこの問題に取り組んだ研究は極めて限られている。本論文では、血縁関係検証のための新たな近傍反発距離学習法(Neighborhood Repulsed Metric Learning, NRML)を提案する。クラス間サンプル(血縁関係のない画像ペア)が類似度が高くなる場合、それらはしばしば近傍に位置し、類似度が低いサンプルよりも誤分類されやすいという事実に着目し、本手法では、クラス内サンプル(血縁関係のある画像ペア)を可能な限り近づけつつ、近傍に存在するクラス間サンプルを反発させ、遠くに押し出すような距離度量を学習することを目指す。これにより、検証に向けたより判別力の高い情報を活用できる。さらに、複数の特徴記述子を用いて補完的な情報を効果的に抽出するため、多視点NRML(Multiview NRML, MNRML)という手法を提案し、複数の特徴を統合する共通の距離度量を探索することで、血縁関係検証の性能向上を図っている。実験結果により、提案手法の有効性が示された。最後に、人間の血縁関係検証能力についても実験的に評価した結果、本手法の性能は人間の観察者と同等であることが明らかになった。