要約
現在、リモートセンシングを用いた海洋ごみの検出およびそのスペクトル特性の評価に向けた研究が多数行われており、最終的には新たな運用型モニタリングソリューションの開発を目指している。本研究では、海洋ごみ検出を可能にする機械学習（ML）アルゴリズムの開発と評価を目的とした基準データセットとして、「海洋ごみアーカイブ（Marine Debris Archive, MARIDA）」を紹介する。MARIDAは、マルチスペクトルセンサーを搭載したSentinel-2（S2）衛星データに基づく初のデータセットであり、海洋ごみと同時に存在する多様な海洋特徴（サルガッサ大型藻類、船舶、自然有機物、波、航跡、泡、異なる水質タイプ（澄んだ水、濁った水、堆積物を含む水、浅水域）、雲など）を区別可能である。本データセットには、世界の複数の地理的地域において、異なる季節、年次および海況条件下で確認されたプラスチックごみイベントの検証済みアノテーション（地理座標付きポリゴン／ピクセル）を提供している。さらに、MARIDAデータセットの詳細なスペクトル的・統計的分析および、弱教師付きセマンティックセグメンテーションおよびマルチラベル分類タスクにおける標準的なMLベースラインも提示している。MARIDAはオープンアクセスデータセットとして公開されており、研究コミュニティが浮遊物質、海況特徴および水質タイプのスペクトル特性を調査し、人工知能およびディープラーニングアーキテクチャに基づく海洋ごみ検出手法、および衛星データ前処理パイプラインの開発と評価を推進できる環境を提供する。