新薬の開発は高コストかつ時間のかかるプロセスであり、しばしば安全性の懸念を伴うが、既に安全性が確立された旧薬を、当初開発された用途とは異なる医療状態に再利用する「ドラッグリポージング」は、魅力的な代替手段として注目されている。この際、旧薬が新しい標的に対してどのように作用するかという理解は、ドラッグリポージングの鍵となる要素であり、近年多くの関心を集めている。これまでに、薬剤と標的の結合親和性を推定するための統計的手法や機械学習モデルが多数提案されてきた。特に、深層学習(deep learning)アプローチは、最先端の手法としてその有効性が示されている。しかし、これらのモデルでは、分子が原子間の化学結合によって構成されるという本質的な性質にかかわらず、薬剤および標的が一般的に1次元の文字列(1D string)として表現されていた。本研究では、薬剤の構造情報をより正確に捉えることを目的として、「GraphDTA」という新規モデルを提案する。このモデルは、従来の手法とは異なり、薬剤をグラフとして表現し、グラフ畳み込みネットワーク(graph convolutional networks)を用いて薬剤-標的結合親和性を学習する。我々は、2つのベンチマークデータセットを用いて本手法の有効性を検証し、分野内の最先端モデルと性能を比較した。その結果、GraphDTAは従来の非深層学習モデルよりも高い予測精度を示すだけでなく、他の深層学習アプローチに対しても優れた性能を発揮した。これは、分子をグラフ表現によって扱うことが、薬剤-標的結合親和性の正確な予測に実用的な利点をもたらすことを示している。本手法の応用範囲は、ユーザー側や製品側のいずれか、あるいは両方がグラフで表現可能な任意のレコメンデーションシステムにも拡張可能である。