
要約
工業用検査における欠陥検出において生じる不均衡問題は、モデル性能に大きく影響を与える主要な課題の一つである。本研究では、欠陥と非欠陥データの数の差異、欠陥クラス間の分布ギャップ、および欠陥のサイズの多様性といった、工業検査における欠陥検出に特有の不均衡問題に着目し、異常検出(anomaly detection)手法を用いてこれらの課題に対処する。特に、生成対抗ネットワーク(GAN)およびオートエンコーダーに基づくアプローチが本分野において有効であることが示されている。本研究では、1) オートエンコーダーを生成器として用い、正常入力と異常入力それぞれに対して独立した2つの識別器を持つ新たなGANベースの異常検出モデルを提案する。また、2) 新たな損失関数として「Patch損失」と「異常対抗損失」を提案し、これらを統合してモデルの効果的な最適化を実現する手法を検討する。実験では、MNIST、Fashion MNIST、CIFAR-10/100といった従来のベンチマークデータセットに加え、実世界の工業データセットであるスマートフォンケースの欠陥データセットを用いてモデルの評価を行った。実験結果から、本手法が従来の最先端技術(State-of-the-Art)を上回る性能を示し、受信者操作特性曲線下の平均面積(AUROC)という指標において優れた結果を達成したことが確認された。