目的。個々の指の運動を正確に解読することは、高度な義手制御において不可欠である。本研究では、電脳皮質電位(ECoG)信号のリーマン空間特徴量と時系列動態を、現代の機械学習(ML)手法と組み合わせることで、個別指レベルにおける運動解読精度の向上を図った。手法。指の運動と相関する情報量の多いバイオマーカーを抽出し、BCIコンペティションIVデータセット(ECoG、3名の被験者)および類似の記録手法を採用した第二のECoGデータセット(スタンフォード、9名の被験者)において、最先端の機械学習アルゴリズムの性能を評価した。さらに、ECoG信号の履歴を効果的に捉えるために、特徴量の時系列連結(temporal concatenation)を検討した結果、分類(p < 0.01)および回帰(p < 0.01)の両タスクにおいて、単一エポックでの解読よりも顕著な性能向上が得られた。主な成果。特徴量の連結と勾配ブースティングツリー(最良の性能を示したモデル)を用いることで、6クラス(休息状態を含む)の個別指運動検出において77.0%の分類精度を達成し、3名のBCIコンペティション被験者において、従来の最良手法である条件付き確率場(CRF)よりも11.7%の向上を実現した。連続的な運動軌道解読においては、被験者および指を横断して平均ピアソン相関係数(r)が0.537に達し、BCIコンペティションの優勝手法および同データセットで報告された最先端手法(CNN + LSTM)を上回った。さらに、本手法は低時間計算量を実現しており、トレーニングには17.2秒未満、推論には50ミリ秒未満で済む。これにより、従来報告された最先端の深層学習手法と比較して、トレーニング速度が約250倍高速化された。意義。本研究で提案する技術は、最小侵襲的な皮質信号を用いて、高速かつ信頼性の高い高精度な義手制御を実現可能にする。