要約
本稿では、新たな動的グラフ畳み込みニューラルネットワーク(DGCNN)を用いたマルチチャネルEEG感情認識手法を提案する。提案手法の基本的な考え方として、マルチチャネルEEG特徴量をグラフ構造でモデル化し、そのモデルに基づいてEEG感情分類を行うことが挙げられる。従来のグラフ畳み込みニューラルネットワーク(GCNN)手法とは異なり、本研究で提案するDGCNN手法は、ニューラルネットワークを学習させることで、異なる脳波(EEG)チャネル間の内在的な関係性を、隣接行列(adjacency matrix)として動的に学習可能である。このようにして得られた隣接行列を用いることで、より判別力の高いEEG特徴量の抽出が可能となり、結果としてEEG感情認識性能の向上が図られる。本研究では、SJTU感情EEGデータセット(SEED)およびDREAMERデータセットを用いて広範な実験を実施した。実験結果から、提案手法が最先端の手法を上回る認識性能を達成することが明らかになった。具体的には、SEEDデータセットにおいて、被験者依存実験では平均認識精度90.4%、被験者独立なクロスバリデーションでは79.95%の精度を達成した。また、DREAMERデータセットでは、感情の価値(valence)、覚醒度(arousal)、支配性(dominance)の各分類において、それぞれ平均精度86.23%、84.54%、85.02%が得られた。