さまざまな応用分野においてグラフ構造データが豊富に存在する中で、グラフ表現学習は、グラフに対する情報豊富なベクトル表現を探索するための有効な計算手法として注目されている。従来のグラフカーネル手法は一般的に周波数ベースである。すなわち、学習されたベクトル表現の各次元は、特定の種類の部分構造の出現頻度を表す。しかし、事前に定義された部分構造の出現回数を数える作業には高い計算コストが伴う。さらに、学習されたベクトル表現は非常にスパース(疎)であり、内積の利用が困難となる。また、値が整数のみを取るため、表現空間が滑らかでないという問題もある。現在の最先端手法は、より優れたベクトル表現を生成するのではなく、カーネル関数の変更によってこれらの課題に取り組んでいる。しかし、それらはカーネルベースの手法にのみ対応するカーネル行列を生成するにとどまり、ベクトル表現を必要とする手法とは互換性が低い。多様な構造やサイズのグラフに対して、滑らかで効果的なベクトル表現を効率的に学習するという課題は依然として困難である。近年の深層自己符号化器(autoencoder)の進展に着目し、本稿では自己符号化器がグラフ表現学習において果たす可能性を検討する。動画や画像とは異なり、グラフはサイズが多様であり、そのままでは自己符号化器に適した形で準備されていない。そのため、本研究では、グラフの低次元ベクトル表現を効率的に学習できる新しいフレームワーク、すなわち「識別的グラフ自己符号化器(Discriminative Graph Autoencoder, DGA)」を提案する。DGAは、大きなグラフを小さな部分グラフに分解し、その中から構造情報をサンプリングする。このアルゴリズムは、グラフのラベルに基づく識別情報を保持しつつ、滑らかで情報豊かなベクトル表現を効率的に生成する。DGAの性能を検証するために、多数の実験を実施した。実験結果から、さまざまな実世界データセットおよび応用事例(例:…)において、従来手法および最先端手法と比較して、DGAが高い効率性と有効性を示すことが明らかになった。