光体積脈波(Photoplethysmogram: PPG)信号は、血中酸素飽和度計やスマートウォッチなどに広く用いられている。PPG信号を解析する際の基本的なステップとして、心拍の検出が挙げられる。これまでに多数のPPG心拍検出アルゴリズムが提案されてきたが、その中で最も優れた性能を発揮するものがどれであるかは明確でない。目的:本研究の目的は以下の3点である。(i)PPG心拍検出器の設計と評価を可能にするフレームワークの構築;(ii)異なる使用状況におけるPPG心拍検出器の性能評価;(iii)患者の人口統計学的・生理学的特性が検出性能に与える影響の調査。手法:8つのデータセットから得られたデータを用いて、15種類の心拍検出アルゴリズムを心電図(ECG)から導出された心拍に対して評価した。性能評価には、感度と陽性予測値を統合したF1スコアを採用した。主な結果:運動が伴わない状態では、8つの心拍検出器が良好な性能を示し、病院データおよび安静時におけるウェアラブルデバイスデータにおいてF1スコアが90%以上であった。運動中では性能が低下し、F1スコアは55~91%に低下した。新生児では成人よりも性能が劣り、新生児におけるF1スコアは84~96%であったのに対し、成人では98~99%であった。心房細動(AF)状態では、正常徐脈(sinus rhythm)時と比較して性能が低下し、AF時のF1スコアは92~97%であったのに対し、正常徐脈時では99~100%であった。意義:PPG心拍検出器として「MSPTD」と「qppg」の2つのアルゴリズムが最も優れた性能を示し、それぞれが補完的な特徴を有していた。本研究の知見は、PPG心拍検出アルゴリズムの選定に役立つ。また、本研究で使用したアルゴリズム、データセット、および評価フレームワークはすべて公開されており、自由に利用可能である。