脳磁気共鳴画像(MRI)の解析は、神経疾患の正確な診断および治療に不可欠である。この分野における技術的進展は、健康の質の向上に寄与する可能性を秘めている。MRI画像の再構成特性に起因して、疾患の検出とセグメンテーション、データ拡張、データ収集の改善、画像の品質向上など、多くの分野でさらなる進化が期待されている。数年来、これらの課題に対処するため多様なアプローチが試みられてきた。その中で、機械学習(Machine Learning)および深層学習(Deep Learning)が特に注目されている。監視付き・非監視付き学習、次元削減、生成モデルなど、さまざまなデータマイニング手法やアルゴリズムがMRI解析に応用可能である。さらに、他の画像処理タスクに用いられる新規の深層学習アーキテクチャも、本分野での活用が期待される。特に、新種の畳み込み構造、オートエンコーダー、生成的対抗ネットワーク(GAN)などがその代表例である。本研究の目的は、こうした新技術の一つをT1強調脳MRI(T1WMRI)に適用することにある。具体的には、神経画像診断における課題に対応できる深層畳み込みオートエンコーダー(Deep Convolutional Autoencoder)の開発を行う。本オートエンコーダーの入力は健常者(コントロール)のT1WMRI画像とし、出力は入力と同一の画像を再構成することを目的とする。ただし、画像はネットワーク内部で次元の低い潜在空間(lower-dimensional space)を通過するため、元の画像の再構成は困難となる。この性質により、オートエンコーダーは「ノーマティブモデル(normative model)」として機能する。このノーマティブモデルは、疾患の存在しない状態における神経解剖学的変異の分布(または正常範囲)を定義する。健常者画像による学習が完了した後、本オートエンコーダーがノイズ低減や疾患検出ツールとしての応用可能性について議論する。