
要約
機械学習手法は、さまざまな方法で材料の予測に用いられてきた。近年、結晶材料を「結晶グラフ」と呼ばれる多グラフで表現する手法が提案された。この結晶グラフに適応された畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、平衡結合距離を空間情報として用いることで、材料の体積特性を効果的に予測している。また、小分子に対するグラフニューラルネットワークの最近の研究では、距離情報を用いない「ノーディスタンスモデル」が、距離情報を用いるモデルとほぼ同等の性能を示すことが明らかになった。本論文では、結合距離を一切使用しない結晶グラフニューラルネットワーク(CGNN)を提案し、理論的材料データベースに基づくデータセット上で学習可能なスケール不変型グラフコーディネータを導入した。このCGNNモデルは、各テスト材料について形成エネルギー、単位格子体積、バンドギャップ、全磁化強度といった体積特性を予測し、その平均誤差は対応するデータベースの値を下回っている。予測されたバンドギャップおよび全磁化強度を用いて、金属-絶縁体および非磁性-磁性の二値分類を実施した結果、良好な分類性能が得られた。本論文では、予測された形成エネルギーを活用した高-throughputスクリーニングによる候補材料探索について考察するとともに、CGNNアーキテクチャを基盤とした今後の材料データマイニングの発展可能性についても議論している。