要約
乳がんは世界中の女性に広く見られる非常に致死性の高いがんです。診断には超音波やマンモグラフィーなどの非侵襲的手法が用いられていますが、生検後の組織学的検査が依然として診断の「ゴールドスタンダード」とされています。しかしながら、組織の異常を手動で評価するプロセスは労力が大きく、費用も高く、事前に専門知識を要するという課題があります。特に資源が限られた地域や遠隔地においては、早期発見の意識の普及と専門的な医療インフラへのアクセスが大きな課題でありながら、命を救うために不可欠です。近年、GPUのメモリ性能や計算能力の飛躍的向上、およびデジタル病理データの増加に伴い、深層学習に基づくアプローチが乳がん検出において有望な成果を上げています。このような背景を踏まえ、本研究では組織像を用いた乳がんの検出およびグレーディングを目的として、Breast-NETと名付けた深層畳み込みニューラルネットワークモデルを提案します。本モデルの性能はBreakHisデータセット上で評価され、侵襲性乳管癌(IDC)グレーディングおよびIDCデータセットにおいてもその汎化能力を示しました。広範な実験および統計的性能解析、さらにアブレーションスタディを通じて、提案モデルの効率性が裏付けられました。さらに、7種類の事前学習済み畳み込みニューラルネットワークを用いた転移学習の有効性も検証しました。実験結果から、本フレームワークはBreakHis、IDCグレーディング、IDCの各データセットにおいて、精度、メモリ使用量、計算複雑度の観点で、既存の最先端手法を上回る性能を発揮することが明らかになりました。