
要約
感情原因抽出(Emotion Cause Extraction: ECE)は、テキスト内の特定の感情の背後にある原因を抽出することを目的としている。近年、ECEタスクに関連する研究が多数発表され、注目を集めている。しかし、これらの手法は以下の二つの主要な問題を無視している。第一に、ドキュメントレベルの文脈情報がECEに与える影響について十分に考慮されていない点である。第二に、アノテーションされた感情節(emotion clause)を効果的に活用するための十分な探索が行われていない点である。第一の問題に対し、我々は指定された候補原因節に対応する双方向階層的アテンションネットワーク(Bidirectional Hierarchical Attention network: BHA)を提案する。これにより、構造的かつ動的にドキュメントレベルの文脈情報を捉えることが可能となる。第二の問題に対し、グラフアテンションネットワークの各層に感情フィルタリングモジュール(Emotional Filtering module: EF)を設計し、感情節に基づいてゲートスコアを計算することで、関係のない情報を効果的にフィルタリングする。BHAとEFを統合したEF-BHAは、双方向から動的に文脈情報を集約するとともに、不要な情報を排除する機能を有する。実験結果から、EF-BHAは中国語および英語の異なる言語環境で公開されている2つのベンチマークデータセットにおいて、競争力ある性能を達成した。さらに、文脈情報が感情原因抽出に与える影響を定量的に評価し、候補原因節と文脈との間の相互作用を可視化することにも成功した。