シンボリックダイナミクスとシャノンエントロピーを用いたアトリウム細動の自動オンライン検出

背景心房細動(Atrial Fibrillation, AF)は、世界中で最も一般的かつ深刻な不整脈であり、 morbidity(罹患率)および mortality(死亡率)に大きな影響を及ぼしている。AFの早期検出は、急性および慢性の心律不整脈の予防において極めて重要である。目的本研究の目的は、心電図(ECG)におけるAF発作をリアルタイムかつ自動的に検出する手法の開発である。本手法はRR間隔を用い、非線形/線形整数フィルタの基本操作、記号的ダイナミクス(symbolic dynamics)、およびシャノンエントロピーの計算を組み合わせたものである。新規の再帰的アルゴリズムを用いることで、オンラインでのリアルタイム解析処理が可能となる。結果検証には、公開されている4つの臨床データセット(Long-Term AF、MIT-BIH AF、MIT-BIH Arrhythmia、MIT-BIH Normal Sinus Rhythm データベース)を用いた。最初のデータセットを学習用に、残りの3つをテスト用に使用した。受信者操作特性(ROC)曲線に基づき、本手法で最も優れた性能が得られたのは識別閾値0.353のときであり、感度(Se)、特異度(Sp)、陽性予測値(PPV)、全体的精度(ACC)はそれぞれ96.72%、95.07%、96.61%、96.05%であった。他の3つのデータセットはそれぞれテスト用として用いられた。得られた閾値(0.353)を適用した結果、2番目のデータセットではSe:96.89%、Sp:98.25%、PPV:97.62%、ACC:97.67%、3番目のデータセットではSe:97.33%、Sp:90.78%、PPV:55.29%、ACC:91.46%、4番目のデータセットではSp:98.28%が得られた。また、既存の手法を用いた比較検証も実施した。結論全体として、他の既存技術と比較して、本研究で開発した手法は、評価されたさまざまな実験条件下において、これらのデータベースを用いた検証で従来手法を上回る性能を示した。このことから、今後の臨床現場において、本手法が実用的なツールとして活用可能であることが示唆される。