要約

360度の視野を活用した全方位視覚（オムニディレクショナルビジョン）は、ロボティクス、産業用点検、環境モニタリングなど多岐にわたる分野において、環境理解のための手段としてますます重要性を増している。従来のピンホール視覚と比較して、全方位視覚は環境全体に対する包括的な認識を可能にし、シーンの把握の完全性および意思決定の信頼性を顕著に向上させる。しかし、この分野における基盤的研究は、従来のピンホール視覚に比べて長らく遅れていた。本講演では、エンベデッドAI（身体化AI）時代における新たなトレンドとして、産業界の需要の高まりと学術界の関心の増大に伴い、全方位視覚の急速な発展が進んでいることについて紹介する。特に、全方位生成、全方位認識、全方位理解に関する最近の飛躍的進展、および関連するデータセットの整備について述べる。学術界と産業界の知見を統合した上で、エンベデッドAI時代にふさわしい理想的なパノラマシステムアーキテクチャ「PANORAMA」を提案する。このアーキテクチャは4つの主要サブシステムから構成される。さらに、パノラマ視覚とエンベデッドAIの交差点における新潮流や、複数コミュニティに及ぼす影響についての深い考察を提示するとともに、今後のロードマップと未解決課題を明らかにする。本概要は、最先端の技術進展を総括し、エンベデッドAI時代における堅牢で汎用的な全方位AIシステム構築に向けた将来の研究における課題と機会を明示する。