LLMを活用したエージェントによるドラッグ資産デューデリジェンスにおける競合状況マッピング

本稿では、迅速なドラッグ資産のデューデリジェンスを実現するエージェント型AIシステム内に統合された「競合発見(competitor discovery)」コンポーネントについて記述し、その性能をベンチマーク評価する。本研究で提案する競合発見AIエージェントは、特定の適応症(indication)を入力として受け取り、その適応症における競合するすべての医薬品を検索し、それらの医薬品について標準的な属性(canonical attributes)を抽出する。競合の定義は投資家ごとに異なり、データは有料・ライセンス制であり、登録データベース間で分散しており、適応症ごとにオントロジーの整合性が欠如しており、医薬品名に別名(alias)が多用され、マルチモーダルな情報が含まれ、かつ急速に変化するという特徴を持つ。このような複雑な環境において、現在のLLMベースのAIシステムは、競合医薬品の名前を信頼性高くすべて検出できるとは限らず、さらにこのタスクに対する公的に承認されたベンチマークも存在しない。こうした評価の不足に対処するため、私たちはLLMベースのエージェントを用いて、私募バイオテックVCファンドが5年間蓄積したマルチモーダルかつ非構造的なデューデリジェンスメモを、適応症から競合医薬品へのマッピングを含む構造化された評価コーパスに変換した。また、予測された競合医薬品リストから誤検出(false positives)を除去し、精度(precision)を最大化し、幻覚(hallucination)を抑制するため、LLMをJudgeとして用いた競合検出結果の検証エージェントも導入した。本ベンチマーク上で、我々の競合発見エージェントは83%のリコール(recall)を達成し、OpenAI Deep Research(65%)およびPerplexity Labs(60%)を上回った。本システムは企業向けプロダクション環境で運用されており、バイオテックVCファンドを対象としたケーススタディにおいて、アナリストの競合分析に要する時間は2.5日から約3時間(約20倍)に短縮された。