
要約
多くの最先端(SOTA)の複数対象追跡(MOT)手法では、再識別(Re-Identification, ReID)特徴の抽出とマッチングが採用されており、特に頻発する長時間の隠蔽状態に対して高い有効性を発揮する。近年の研究はエンドツーエンドの物体検出と追跡に注力しているが、MOT17やMOT20などのベンチマークにおいて、依然として従来手法を上回る性能を達成できていない。したがって、実用的な観点から見ると、検出と埋め込み(embedding)を分離した手法は、精度、モジュール性、実装の容易さという点で依然として最適な選択肢である。ただし、特徴抽出に伴うオーバーヘッドのため、エッジデバイスでは実用的ではない。本論文では、精度、モジュール性、実装の容易さを維持しつつ、特徴抽出のオーバーヘッドを最小限に抑える選択的アプローチを検討する。このアプローチは、さまざまなSOTA手法に統合可能である。StrongSORTおよびDeep OC-SORTへの適用により、その有効性を実証した。MOT17、MOT20、DanceTrackデータセットにおける実験結果から、本手法は隠蔽状態における特徴抽出の利点を保持しつつ、実行時間を大幅に削減することを示した。さらに、変形や外見の類似性が顕著なDanceTrackのような状況において、特徴マッチング段階での誤認識を防止することで、精度の向上も達成した。GitHubリポジトリ:https://github.com/emirhanbayar/Fast-StrongSORThttps://github.com/emirhanbayar/Fast-Deep-OC-SORT